エネルギー代謝3

組織内でATPを産生するしくみ

2 β酸化(脂質代謝)

 脂肪は脂肪酸のβ位の炭素が酸化されてアセチルCoAの形に分解され、クエン酸回路に送られます。このしくみをβ酸化と呼んでいます。この反応は豊富に酸素がある条件下でのみ行われるので、有酸素的なエネルギー代謝に含まれます。

 安静時や緩やかな運動時など、酸素が豊富な条件では脂肪がよく消費されます。安静時にはエネルギー源の約70%が脂肪です。しかし心拍数が最大心拍数(心拍数の上限値)の50〜70%を越えると糖質代謝が中心となり、最大心拍数の80%を越えるような激しい運動では脂肪は利用されないといわれています。

 しかし90分を越える持続的な運動では、グリコーゲンのみではエネルギー源が不足しがちなため、脂肪を利用することが必要になります。トレーニングを積んでいる選手では、酸素の取り込みが十分に行われ、エネルギー代謝の能力も鍛えられることから、激しい運動の最中にも脂肪がエネルギー源として活用されるようになります。90分を越えるレースを戦い抜くためには、日頃のトレーニングによってエネルギー代謝を活発化させ、脂肪をうまく利用できるようにしておくことが必要です。

3 クエン酸回路

 上記1(好気的解糖)2(脂質代謝)の経路によって代謝された物質からエネルギーを産生するしくみです。前回、有酸素的な糖質代謝においては、グルコースやグリコーゲンからピルビン酸がつくられることを取り上げましたが覚えていますか?
 そのピルビン酸やアセチルCoAがクエン酸回路に送られると、代謝回路が回ってエネルギーを産生します。

クエン酸回路 クエン酸回路では、ピルビン酸からアセチルCoAがつくられます。アセチルCoAはオキザロ酢酸と結合し、クエン酸がつくられます。クエン酸が代謝されて、再びオキザロ酢酸がつくられ、この回路を回し続けます。これらの物質名等を覚える必要はありませんが、これが運動のためのエネルギーを生み出す、いわば筋肉のエンジンに相当する仕組みです。これを回し続けるためには、十分な酸素と燃料が必要です。逆に、酸素と燃料が十分に供給されれば、エンジンを回し続けることが可能です。

 ピルビン酸またはアセチルCoA1分子がクエン酸回路で代謝されることにより、合計で15分子のATPを生じます。

 グルコース1分子からピルビン酸が2分子作られますから、クエン酸回路におけるグルコース1分子当たりのATP産生量は、15分子×2=30分子となります。

4 エネルギー産生の効率

 これらのエネルギー代謝回路が回ることにより、血糖の嫌気的解糖ではグルコース1分子から2分子のATP、グリコーゲンからの嫌気的解糖では3分子のATPを生じるのに対し、好気的解糖では38(または39)分子ものATPを生じることがわかります。また、脂肪酸のβ酸化では、1分子の脂肪酸から百分子以上のATPが得られます。このように、有酸素運動はエネルギーの産生効率がとてもよいのです。

 つまり、酸素を十分に取り入れて利用できる選手は、同じ原材料からより多くのエネルギーを得ることができます。酸素を十分に取り入れられない選手は、無駄にエネルギー源を浪費してしまいます。有酸素運動のパフォーマンスを向上させるのに、心肺機能のトレーニングが重要なのはそのためです。

☆ポイント☆  持久力をつけて、燃費のいいドライバーになろう

2000.05.25